労働局の労働総合相談コーナーから
「あっせんの開始通知」が来た!
伝授します
(株)北見式賃金研究所 北見昌朗です。
困った時はご連絡下さい。豊富な立会い実績でアドバイスいたします。
労働局の総合労働相談コーナーから「あっせんの開始通知」を送られてしまった会社が増えています。
トラブルの相手はロクにまともに働かない勤務成績が最悪の元社員で、労働局の総合労働相談コーナーに出かけて、言いたい放題わめきちらして、あっせんの申請書を提出し、挙げ句の果てに慰謝料を要求しています。こんな問題社員の登場が日本の会社を困らせています。
そこで労働局の総合労働相談コーナーで立ち合い実績を踏んだ社会保険労務士として、実践から学んだトラブル解決の知恵を解説します。大事なのは、労働契約法を学んだ上での、労使トラブルに対する事前の備えです。日頃から、労働契約法の対策を講じていくのが一番です。しかし、労働契約法への対策が万全でなかったとしても、被害を最小限に抑えるための対応法はあります。
「あっせんの開始通知」など、労使トラブルの解決に向け、会社のために、精一杯お手伝いさせて頂きます。
“不当な要求”に怒る会社
労働局 総合労働相談コーナーに関するこんなケースがあったら、是非ご相談下さい。
[事例①]
うつ病で休職中だった社員がハワイで豪遊していたことが発覚した。休職の発令を取り消して解雇したら「パワハラで精神障害になった。不当な解雇だ」と訴えてきた。冗談じゃない。どこが“うつ病”なんだ!
[事例②]
上司の指示をまともに守らずに首になった元社員が「不当な解雇だから納得できない。慰謝料を払え」と言ってきた。冗談じゃない。慰謝料が欲しいのは、会社の方だ。
[事例③]
欠勤ばかりのパートタイマーに雇用契約満了で辞めてもらったら「解雇理由が納得できない」と言ってきた。冗談じゃない。自分の方こそ休んでばっかりではないか!
[事例④]
勤務時間中に勝手にタバコ休憩する社員。上司が何度も注意したら退職願が提出された。自己都合で辞めてくれて良かったと思ったら、後から未払い残業代の請求書が-。冗談じゃない。給与を返して欲しいのは、会社の方だ。
[事例⑤]
朝出勤しても「おはようございます」と言わず、帰るときに「お先に失礼します」とも言わない社員。注意したら「パワハラを受け、うつ病が発症」という診断書を出してきて休んでしまった。冗談じゃない、挨拶ぐらい常識だろ、何がパワハラなんだ!
個別労働関係紛争解決制度について
近年、労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間のトラブル(以下「個別労働関係紛争」といいます)が増加しております。
労働者と事業主という継続的な人間関係を前提とした円満な解決のためには、労使慣行等をふまえた解決が図られることも重要です。
このため、個別労働関係紛争の解決援助サービスを提供する、全国レベルのセイフティ・ネットとして、平成13年10月1日より「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行されました。
この「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」は、労使トラブルの未然防止や、迅速な解決の促進を目的に、次の3つの制度を定めています。
- 労働局 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
- 労働局長の行う助言・指導
- 紛争調整委員会によるあっせん
1.労働局 総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき設置されたのが労働局の総合労働相談コーナーです。
職場での仕事に関するトラブル(紛争)は労働者と事業者とがお互いに法令や労働判例を知らないことや、トラブルを未然に防止、あるいは大きくなってこじれる事を防ぐことができます。労働局 総合労働相談コーナーはそんな相談に乗っています。
厚生労働省はあらゆる労働に関する相談を受け付ける窓口として全国に「労働局 総合労働相談コーナー」を配置し適切なアドバイス及び情報提供を行うようになりました。
2.労働局長の行う助言・指導
都道府県労働局長が、実際に紛争状態にある労働者又は事業主の方々に個別労働関係紛争の問題点と解決の方向を示すのが、労働局長の行う助言・指導です。労働局 総合労働相談コーナーが担当することになります。なお、これは、トラブル当事者に一定の措置の実施を強制するものではありません。
<労働局 総合労働相談コーナーの対象となるトラブル>
対象となる個別労働関係紛争の範囲は、労働条件その他労働関係に関する事項についてのトラブルです。労働局 総合労働相談コーナーの具体的内容としては、
- 解雇、配置転換、出向、雇い止め、労働条件の不利益変更等の労働条件に関するトラブル
- 事業主によるいじめに関するトラブル
- 会社分割による労働契約の承継に関するトラブル
- 募集・採用に関するトラブル
等が該当することとなります。
<労働局 総合労働相談コーナーの対象とならないトラブル>
一方、次のようなトラブルは労働局 総合労働相談コーナーの対象となりません。
- 労働関係に関しない事項についてのトラブル、例えば、労働者と事業主の私的な関係における金銭の貸借に関するトラブルなど(労働局 総合労働相談コーナーは介入できません)
- 労働組合と事業主の間のトラブルや、労働者同士のトラブル(労働局 総合労働相談コーナーは介入できません)
- 裁判で係争中である又は確定判決が出されている等、他の制度において取り扱われているトラブル(労働局 総合労働相談コーナーは介入できません)
- トラブルの原因となった行為の発生から長期間経過しており、的確な助言・指導を行う事が困難なトラブル(労働局 総合労働相談コーナーは介入できません)
- 申立人の主張が著しく根拠を欠いていると認められるトラブル(労働局 総合労働相談コーナーは介入できません)
3.紛争調整委員会によるあっせん
労働問題について争いのある当事者の間に学識経験者である第三者が入り、両者の主張の要点を確かめ、話し合いを促進することにより、トラブルの円満な解決を図る制度を「あっせん」といいます。
あっせんの特徴としては、- あっせんは、あっせん委員が当事者双方の主張を確かめ、解決に結びつく合意点を探りながら、話し合いにより解決することをお手伝いする。
- あっせんは、どちらが正しいか、勝ち負けを決める場ではない。
- 場合によっては、具体的なあっせん案を提示するなどの調整を行う。
このように、あっせんでは労使双方が協力しあい、トラブルを解決させようとする姿勢が必要です。
あっせんは無料で、裁判のように時間も費用もかかりません。早く解決したい、話し合いで解決したい場合には、「あっせん」の活用が有効です。
あっせんの対象となるトラブルは、労働問題に関するすべてのトラブルが対象になります(募集・採用に関するトラブルは除きます)。
普通解雇、整理解雇、退職勧奨、雇い止め、雇用保障、雇用期間保証、退職金の追加上乗せ、退職理由、懲戒処分、減給、退職金不支給、降格、人事異動、労働条件引き下げ、人事考課、昇進、昇格、昇給、出向、配置転換、パートへの身分変更、採用内定取消、雇用保険手続き不備の損失補填、いじめ・嫌がらせ、セクハラの謝罪と損害賠償・慰謝料など。
このように、あっせんの対象は多岐にわたります。
紛争調整委員会は、弁護士、大学教授等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会です。都道府県にある労働局ごとに設置されています。
この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が、トラブル解決に向けてあっせんを実施します。
あっせんの申請は、都道府県の労働局や総合労働相談コーナーに、あっせん申請書を提出します。
あっせんは、ある程度事前にトラブルを調整・調査した上で、あっせんの期日(あっせんが行われる日)を定められ、トラブルの当事者である両者にあっせんの期日が通知されます。
両者はあっせんの期日に基づき、労働局に出向いて話をすることで、解決案を導き出します。ただし、あっせんに参加するかしないかは、会社側の自由です。あっせんに参加しなくても、罰則はありません。
あっせんは、あっせん委員が間に入って話し合いを促進するのですが、そこで両者の納得のいく解決が行われれば、あっせんの終了となります。トラブルの解決までは事前の調整・調査を含めて1ヵ月程度で解決させるのが原則です。
- あっせんに参加することを強制されたり、あっせんに参加しなかったことによって、不利益を被ることはありません。
- あっせんの手続きは、参加が強制されるものではありません。また、参加しなくても、あるいはあっせんによりトラブルが解決しなくても、不利益な取扱いがなされることはありません。
- あっせん申請をした労働者への不利益取扱いは禁止されています。
- 労働者に問題がある場合、事業主側から、あっせん申請することも可能です。
あっせんはどちらか一方が拒否すれば打ち切りになりますし、双方が合意に至らない場合もあっせんは打ち切りとなり、訴訟に入ることもあります。
労働局 総合労働相談コーナーに対するあっせんの申請について
(1) 労働局 総合労働相談コーナーに対するあっせんの申請は、あっせん申請書に必要事項を記載の上、トラブルの当事者である労働者に係る事業場の所在地を管轄する労働局 総合労働相談コーナーに提出してください。
申請書の提出は原則として申請人本人が労働局 総合労働相談コーナーに来局して行うことが望ましいです。
(2) 労働局 総合労働相談コーナーに対する申請書に記載すべき内容及び注意事項は、次のとおりです。
- 労働者の氏名、住所等
- 事業主の氏名、住所等
- 労働局 総合労働相談コーナーに対してあっせんを求める事項及びその理由